「これ」
帰り際、愁夜さんが私にそう言って
メモ紙を渡した。
開くとそこに書かれたいたのは
携帯の番号とアドレス。
これからは毎日連絡が取れるんだ。
愁夜さんと、ずっと一緒にいられるんだ...
嬉しくて、くすぐったい気持になる。
ぎゅっと握ったこの手の温かさも
これからはいつも感じる事が出来る。
こんなに嬉しいのは初めて。
「それじゃあ」
家の前まで来ると愁夜さんがゆっくりと手を離す。
今まで伝わっていた体温がなくて少しだけ寂しい。
「また連絡するよ」
笑顔でそう言ってくれた時だった。
「美麗?」
愁夜さんの後ろでお兄ちゃんの声がして愁夜さんも振り返る。
「誰?」
明らかに不機嫌なお兄ちゃん、すっと愁夜さんを素通りすると
私の前に庇うようにして立つ。
「あのね、この人は..」
言ってしまってもいいのかな?
この人が海咲愁夜さんですって
全てを知っているこの人に教えてしまっていいのだろうか。
「海咲愁夜です」