聞き覚えのある声。

この声に何度胸をときめかせただろう。

そして

何度この声に怯えていたんだろう。


ゆっくり後ろを振り返ると


「海咲、先生」


愁夜先生が手を振ってこちらに歩いてきた。


嘘、だよね。

ホンモノだよね。


何度も目をこすっても目の前にいる人は変わらない。


「元気だった?」


あの頃と変わらない優しい笑顔。

こんな私に笑顔を向けてくれるなんて..




「先生も元気そうで」

「もう今は先生じゃないんだ」

「え?」

「先生はしていない。少しだけいいかな?」

ゆっくり頷くと、近くにあるベンチへと向かう。


こうしてまた話しができるなんて思ってなかった。

会いに来てくれるなんて思ってなかった。


嬉しくて、心が温かくなって


涙がつーっと頬を伝う。


「俺は君に謝らなければいけない」