「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
何を聞いても、質問しても。
お兄ちゃんは何も応えてくれなかった。
お母さんの事が関係してる、それは知る事は出来たけど。
その内容を知る事は
私には許されなかった。
「よう、どうよ?」
お昼休み、誰もいない中庭の陰になっているベンチで一人で
考え事をしていると、陸斗先生が隣に座る。
「どう、でもないですよ」
そう答えてあまり箸の進まないお弁当を見つめる。
「それ、お前が作ったのか?」
「いいえ、兄です。うち母親は看護師で夜も遅いので」
「ふーん、兄貴、かぁ」
その言い方はきっとあの頃を思い出しているんだ。
「何か聞けたか?兄貴から」
その質問に黙って首を左右に振る。
「そうか、まだ聞けずか」
そう言って大きく背伸びをした。
「先生、あの..海咲先生は?どこにいるんでしょうか?」
箸を持つ手を震えさせながら陸斗先生に質問してみると
「さぁね、突然学校辞めたからな。連絡先も変わってる。
家に行っても引っ越したみたいだな」
あれから2カ月。
季節はすっかり秋になった。
明るい色に染まった葉が学校中に絨毯を敷いていく。
はいてもはいても落ちるその葉に誰もが苦労していた。
「そうですよね」


