「くだらない?」

俺の考えてきた事が

やろうとしてきたことが


くだらない?



「そうだよ。こんな事したって、誰も帰って来ない、
響夜もおばさんも」

「やめろーーーー!!」


カンっと音を立てて落ちるナイフ。


「分かってる、分かってるんだ!俺がこんな事しても誰も帰って来ないのは..
でも約束したんだ!!母さんと、響夜と」

「なぁ、これは俺の憶測かもしれないけどな。響夜はおそらく美麗の事が
好きだったんじゃないのか?」

「え?」


「好きだったかまでは分からねぇけど。でも大事に思っていたから
美麗を逃がした。自分が瀕死の状態になっても―――なぁ美麗」

美麗、そう呼ばれた少女を向くと

俯いたまま何も喋らない。

その代わりにぽたぽたと地面に涙を落とし、水たまりを作っていく。


「美麗、お前は何も悪くないんだ、お前はただアイツを助けようとした
それだけだ」

「ちが、私は」

何度も左右に首を振って否定する。


「美麗はな、ずっと苦しんできた。お前にどう償えばいいのか
分からないまま暮らしてきたんだ」




ふと昨日の少年の言葉を思い出す。


「美麗ちゃんは苦しんでるんだ。でもあんたが苦しんできたのを知っているから、自分が悪いから、あんたの事が好きだから、どんな罰でも受けるってそう言ってる」


「助けてください、あの子を笑顔に出来るのはあんただけなんだよ!!!」


必死に訴える彼に俺は最後まで何も言えなかった。

ただ、黙って彼の言葉に耳を傾ける事しかできなかった。





「もういいだろ?美麗は十分に苦しんだんだ。美麗は十分すぎるくらい
罰を受けた。それに...お前美麗の事が好きなんだろう?」