翌日は朝から雨が降っていて

蝉の代わりに雨の音が激しく聞こえてくる。

放課後の数学準備室。

教室の半分くらいしかないこの小さな部屋に
俺と少女は向かい合って立っている。


何故呼び出されたのか彼女は
もう分かっているだろう。


「もっと早くに呼ばれると思ってました」


少女は切なげにそう言うと小さく笑った。


俺が早くこうしなかったのは少しばかり“迷い”があったから。


「でも見つかったなら仕方ないですよね。殺すんでしょう?
私を」



“復讐”

そうだ、俺は...

この子を殺すために此処まで来たんだ。


俺の人生を家族をめちゃめちゃにしたコイツを、ぐちゃぐちゃに
殺すために。


「先生、殺してよ私の事」


少女は近付き、俺を睨む。


すぐに手が届く机のペン立てからカッターナイフを取り出し
刃を出す。


これを刺せば、俺の長年の悔しかった思いも晴れる。

救われるんだ。


これさえ刺せば、刺してしまえば


「早く、殺して」