「先生、何かあったんですか?」 車内で何度かそう少女に聞かれたが 「何でもないよ」 そう答えるしかできなかった。 「泣きそうな顔してる」 「誰が?」 「お前が、だよ」 気が付くといつの間にか鷹野さんも 芝崎さんもいなくなっていて。 静かな車内には 俺と陸斗の二人しかいなかった。 「やめてくれ」 「だったら自分で見てみろよ。」 陸斗がバックミラーをこちらにずらした。 「まぁ確かに」 あまりいい顔はしてないな。