愁夜には父親はいなかった。
小さい頃から母親と弟の三人家族で、
愁夜はいつだって家族を守って来た。
友達と遊ぶよりも弟の世話を優先する奴で。
勿論、忙しい母親に変わって家事なんかもこなしていた。
家族なんて、そう思っていた俺とは対照的なヤツ。
でも話しはすごく合ったんだ。
アイツの考え、行動も、こんなにウマが合う友達なんて
きっと出来るのは一人か二人くらい、
だから大事にしたくて。
あの時、つい約束してしまった。
“必ず美麗を見付けたら連絡する”と。
あの時、本当は愁夜が美麗に対して何かするんじゃないかって
心のどこかで感じていたのかもしれない。
愁夜の気持ちを知っていたから。
でも俺は..それを見て見ぬふりをしてきた。
大切な友達を失いたくないから。
でも――――
それは大きな間違いだった。


