陸斗は昔からお父さんと仲が悪くて。
中学の時に家を出た。
見かねたお母さんがたまに仕送りしてくれたみたいだけど。
学費のほとんどは陸斗が自分で働いて稼いだ。
歳をごまかして、いろんなバイトをしていたらしい。
それくらいお父さんの事が大嫌いなはずなのに。
やっぱり愁夜先生が大事なんだね。
だからイヤな事でも出来ちゃうんだ。
「とにかく俺が調べているのは秘密な。もちろん、愁夜にも」
「分かった」
全てを話し終えて保健室のドアに手をかけようとした時
「美麗は今まで苦しんできた、自分のせいだと、思いこんで生きてきた。
愁夜もそうだ。二人の誤解を解けるのは時間がかかるかもしれない」
さっきとは打って変わった弱気な発言。
こんな陸斗。今まで見たことない。
「私達で導いてあげようよ、あの二人なら絶対に大丈夫だよ」
「真姫...」
久しぶりに聞く、この人の私を呼ぶ声。
「じゃあ行くね」
何だか恥ずかしい気持ちになる。
立ち上がって入口に向かう私に
「ありがとう」
陸斗の声が聞こえた。
「いいよ、別に」
振り返ってそう言うと保健室のドアを閉めた。


