穏やかな風が頬を撫でた。


木々が優しく揺れている。


風に踊るように舞い上がる桜の花びら達は
どこへと行くわけもなく、ただ、自由に雲の彼方へと
向かっていく。




「母さん、響夜。戻ってきたよ」



もう今は桜の花が見えない空に




僕は呟いた。




僕は今、戻って来た。



全てはある目的の為に―――