空悟~大切な君~

「空悟」
父さんが出て来て空悟を抱き上げる。
「兄ちゃんはすぐに帰って来るから、それまでパパと留守番してような」
「いやー!!」
暴れまくる空悟を抱いたまま、父さんは手で行けと俺に合図をする。俺は悪気もなく家を出て扉を閉める。その瞬間家の中からは、
「兄ちゃーん!!」
空悟の泣き声が俺の頭を痛くする。空悟の声から逃げるように俺は本を抱えて走り出した。
いつまでこんな生活が続くんだろうと思いながら。