この王族間での、しかも親子の中での謀反は、当時国中の人間に衝撃を与えたものだ。

貧しさに喘ぐ国民の誰もが、やりたい放題の悪政ばかりを行う老王の死を願っていたのだが。
まさかあの様な形でそれが叶うとは、一体誰が想像しただろうか。






「…今のバリアン王は………二人いた息子の内の…あれは、弟の方か。……実の父親の腹を刺して地位を乗っ取るなんざ……さすが天下の王族様。考える事が斜め上を行ってやがる」

「…しかも父親に留まらず…兄貴も殺ったんだろ…?………12歳とは思えないな…」

当時の騒動の話はあっという間に城下に広がり、人から人を経て国の端々にまで及んでいた。

老王が死んだ。
息子に刺されたらしい。
謀反を計画していたのは二人の王子の内、弟の方。
実の兄もその手にかけたとか。


王が死んだ。
王が死んだ。
王が、死んだ。






何とも血生臭い経緯で君臨した次の王は、果たしてどうだろうか。








国民の多くは、災厄の終わりへの喜びよりも、言い知れぬ不安を抱いた。

老王を裁いた刃は、正義か。それとも。







「今となってはもう、懐かしく聞こえるな……あれから………何年経った?」

ぼんやりと当時の慌ただしさを振り返る旅人に、オヤジはぼそりと呟いた。


















「………三年だ。あっという間さ」