―――この世界は、アレスという神によって創造されたと言われている。
アレスは中央に穴の開いた小さな皿を宙に浮かべ、周りをぐるぐると回り続ける火の玉を、真下には涸れることのない噴水を置いた。
そして水が注がれた皿の上に、三つの葉を浮かべた。
―――世界は皿の様に平らで、海の中央から淡水と海水が別れてわき出ている。
皿から溢れる海水は世界の外に零れ落ち、蒸気となり、雨となって地上に降り注ぐ。
水溜まりの様な世界には、葉の形をした三つの大陸が浮かんでいる。
三つの大陸にはそれぞれ、三つの大国があった。
―――…真北に位置するのは、凍て付く氷の大陸、第一国家『デイファレト』。
数十年前に燐国によって滅ぼされ、王政は崩壊。それ以降、国は氷の大地と化し、永遠の冬季という天災と奇病に見舞われていた。
だが、創造神アレスによる神命により、国は隣国バリアンの妨害を受けながらも、王政復古と共に新たなデイファレト王を迎えた。国史では、これを『雪解けの即位』と記している。
以降、長年凍てついていた王政を一から建て直すため、改革と統治を続けている。
―――…南東に位置するのは、緑溢れる大地、第三国家『フェンネル』。
過去、狂王と言われていた当時のフェンネル王52世の悪政を機に、国内において国家と軍による内紛が生じる。
世に言う『六年戦争』という激戦で、国は自滅の一途を辿っていたが、新たなフェンネル王の君臨により内紛は終止符が打たれる。
以降、自国の統治改革を進めながら、隣国デイファレトの王政復古への助力、バリアンへの国交を願い出るなど、崩れた世界の均衡を正すために三国間の国交に奔走する。
そして三つ目。
―――南西に位置するのは、熱風吹き荒れる砂漠の大地、第二国家『バリアン』。
戦争大国という悪名高き大国で、数十年前に隣国デイファレトを攻め滅ぼしてからは、雨の降らない天災に見舞われ大地は砂漠と化した。
それからは鎖国状態が続いていたが、デイファレトの王政復古と同時期に、王族間で身内による謀反が勃発。当時の老王は息子の第二王子の手によって命を絶ち、以降、第二王子が新たなバリアン王として君臨する。


