亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~





人生には一度に限らず、二度、三度。人によっては何十と、絶体絶命だとか試練だとか、節目の様なものがあるのだと思う。

遭遇する度に回避する者、そこで堕ちる者、そこで何かを得る者と、その後の人生が枝分かれしていく。
その中には、歴史に残る様な大それた事もあるだろうが……恐らく大半は違う。
他人からすれば、ちっぽけなものなのかもしれない。下らない出来事の一つかもしれない。もしかしたら、誰にも知られずに終わるものなのかもしれない。

自分はまだこの世に生を受けて二十年も生きていない、経験も浅いひよっ子だが…人生の節目と言える事を少なからず体験してきたつもりだ。

人様から見れば、それは過言でしかないのかもしれないが。






今、僕はその節目に立たされていると宣言する。
これは、これまで体験してきた中でも最大級クラスに匹敵する、人生の節目だ。

誰が何と言おうと、だ。



ああ、神様…僕は今どうすればいいのでしょうか。

僕は、今。











「―――どうしろって、言うんですか…」


地平線の彼方に身体を半分まで埋めきっている真っ赤な夕日に向かって、ライは力無い声を漏らした。

困惑、不安、絶望を孕んだその声は、誰が聞く訳でも無くそのまま掻き消えていった。
その後を、何とも虚しい沈黙が続いていく。

今にも泣きそうな青年のぼやきに唯一反応を見せてくれるのは、今日会ったばかりのティーラだけ。
しかしその子猫も遊んでとばかりに服の裾をガリガリと引っ掻くだけで、残念ながらライの絶望を拭い去ってはくれない。

その仕草が非常に可愛いのは認めるけれども。















夕日の沈む様子をしばし見詰めた後、ライは再び大きな溜め息を吐いた。
…これが何度目になるのか分からないが、相当な数になることは間違いない。


絶え間無い溜め息の理由をまさに背中に抱えていたライは、困り果てた顔でそっと振り返った。