風の低い声音が、天と地の間を吹き抜けていく。
それ以外は何も聞こえない、何も無い見慣れていても不思議な世界に目を向け、耳を澄ませながら……レヴィは、眉間にしわを寄せた。
「………風が、騒がしい」
「…風はそういうものだろ」
「そういうことじゃない、黙ってろ。…風が、震えてるんだ。怒っているのか何なのか分からないが……………妙に胸騒ぎがする……気味が悪いな」
何やら独りでブツブツと呟いた揚げ句盛大な舌打ちをすると、何の前触れも無くレヴィはバジリスクの速度を上げた。
急に加速する相棒に、ロキは慌ててグランカに指示を出した。
「何だってんだよ…!ったく!」
良き相棒の白槍ことレヴィは、第六感の様なよく分からない感覚が他人より優れているのか何なのかは知らないが…時折、変な事を言う。
特に風の事になると、彼はうるさい。
風が泣いているだの、上機嫌だの…昔から傍にいるロキでさえ理解出来ない事を呟くのだが……彼が妙な事を言った日は、必ず妙な事が起こるから不思議だ。
彼の突飛な言葉で、何の予兆も無く発生した砂嵐に巻き込まれないで済んだ日も、少なくはない。
今回のも、つまりはそんなところだろうか。
とにもかくにも、レヴィの言葉に従うのが最善なのだ。
背中に受けるロキの喚き声など知らぬ顔で、レヴィは赤から黒へのグラデーションに染まっていく空を見上げる。
ざんばらの前髪から覗く彼の瞳は、澄み切った空をただじっと睨んでいた。
風が唸っている。
深い息を吐いている。
荒れ狂う風は、まるで風自身の胸騒ぎを現しているみたいで…。
(何をそんなに騒いでいる…)
どんなに手を伸ばしても掴めない、どんなに語りかけても素通りしていく砂漠の風に尋ねても。
淡々と、砂を持ち去って行くばかりだった。


