何の前触れも無く出て来たバジリスクは、ガーラよりも少し大きめの、やけに気性が荒そうな雄だった。
あのままガーラを直進させていれば、間違いなくガーラの腹や四肢はあの獰猛な牙で裂かれていただろう。
空振りに終わったバジリスクは飛び出した勢いそのままに地響きと共に降り立ち、長い尾で砂地を叩きながらガーラを睨んでいる。
野生のバジリスクが飛び出してくる事など、この砂漠では当たり前な光景であり、縄張り争いでも対峙することがしばしばで、それが彼等のスタイルなのだが……ユアンの元へと駆け寄ってきたライは、厳しい表情で呟いた。
「でも、野生じゃありません……あのバジリスク…調教されています」
獲物を狩ることを第一とするバジリスクが、自分達の様な餌を前にして他のバジリスクを相手にする筈がないのだ。野生ではない。しかし、三槍の所持するバジリスクに、あの大きさの雄などいなかった。
…だとすれば、可能性として考えられるのは…。
「――ライ君…!!」
何処か鬼気迫るユアンの声が思考回路を絶ったと同時に、不意に彼の細腕がライの首根っこを掴んだかと思うと、サナ諸共その場から放り投げられた。ユアン先生、意外と豪腕なのか…!、などと脳裏を掠めた感想をよそにサナを庇いながら慌てて着地し、前に向き直ると…そこには、何処からか現れた何者かと対峙するユアンの姿があった。
「……先生!」
暗い上に黒一色のマントで全身を覆うそのシルエットは目を凝らせど正体不明だったが、ユアンに向ける湾曲した短剣からは、明らかな殺意が滲み出ていた。武器らしい武器を所持していないユアンは、繰り出される敵の攻撃を紙一重で避け続けている。
反射的に腰のダガーを引き抜き、サナを傍らに下ろしてユアンの元へと地を蹴った。…だが、視界の端から飛び込んできた別の鈍い光沢が、その行く手を阻む。
物陰に隠れていたのだろうか。…一回りも二回りも大きな巨体のシルエットが、鋭利な切っ先を携えてライの脇から衝突してきた。
…敵は、複数だ。
(――っ…!?)
咄嗟に身体を捻ったライの脇を、短剣とは言い難い大き目のナイフが通り過ぎて行った。無機質な鉄の刃が、腰元のベルトを掠って皮の繊維に小さな傷を刻む。脇腹に致命的な穴が空くのは防げたが、無遠慮な敵のタックルは諸に受け止めることとなってしまった。
あのままガーラを直進させていれば、間違いなくガーラの腹や四肢はあの獰猛な牙で裂かれていただろう。
空振りに終わったバジリスクは飛び出した勢いそのままに地響きと共に降り立ち、長い尾で砂地を叩きながらガーラを睨んでいる。
野生のバジリスクが飛び出してくる事など、この砂漠では当たり前な光景であり、縄張り争いでも対峙することがしばしばで、それが彼等のスタイルなのだが……ユアンの元へと駆け寄ってきたライは、厳しい表情で呟いた。
「でも、野生じゃありません……あのバジリスク…調教されています」
獲物を狩ることを第一とするバジリスクが、自分達の様な餌を前にして他のバジリスクを相手にする筈がないのだ。野生ではない。しかし、三槍の所持するバジリスクに、あの大きさの雄などいなかった。
…だとすれば、可能性として考えられるのは…。
「――ライ君…!!」
何処か鬼気迫るユアンの声が思考回路を絶ったと同時に、不意に彼の細腕がライの首根っこを掴んだかと思うと、サナ諸共その場から放り投げられた。ユアン先生、意外と豪腕なのか…!、などと脳裏を掠めた感想をよそにサナを庇いながら慌てて着地し、前に向き直ると…そこには、何処からか現れた何者かと対峙するユアンの姿があった。
「……先生!」
暗い上に黒一色のマントで全身を覆うそのシルエットは目を凝らせど正体不明だったが、ユアンに向ける湾曲した短剣からは、明らかな殺意が滲み出ていた。武器らしい武器を所持していないユアンは、繰り出される敵の攻撃を紙一重で避け続けている。
反射的に腰のダガーを引き抜き、サナを傍らに下ろしてユアンの元へと地を蹴った。…だが、視界の端から飛び込んできた別の鈍い光沢が、その行く手を阻む。
物陰に隠れていたのだろうか。…一回りも二回りも大きな巨体のシルエットが、鋭利な切っ先を携えてライの脇から衝突してきた。
…敵は、複数だ。
(――っ…!?)
咄嗟に身体を捻ったライの脇を、短剣とは言い難い大き目のナイフが通り過ぎて行った。無機質な鉄の刃が、腰元のベルトを掠って皮の繊維に小さな傷を刻む。脇腹に致命的な穴が空くのは防げたが、無遠慮な敵のタックルは諸に受け止めることとなってしまった。


