そう言い残し、ライは単身で砂喰いの群れににじり寄って行った。
いざとなったら…と、腰にぶら下がる護身様のダガ―を片手で握り締める。
一応、武術は心得ている。
自分が身を寄せる反国家組織の長達には並ばないし、今後も恐らく越える事など出来ないだろうが…砂喰いの一匹や二匹、仕留める事は出来る。
それに自慢では無いが、逃げ足は速い。自慢では無い。別に臆病という訳でもない。嘘ではない。
荷車に群がる砂喰いとの距離が、本の数メートルという所まで歩み寄ったが、どれだけその荷車に執着しているのか……どいつもこいつも、ライには見向きもしない。
空回りする車輪や木造の天井にわさわさと這いあがり、ガリガリと齧りつく彼らの隙間から、ライはその場で屈んで荷車を確認した。
たいてい、持ち主が誰なのかを示す何かしらのマークや刻印などが施されている筈である。
既に荷車は半壊してしまっていたが、それでも何か無いものかとライは根気よく目を走らせた。
途中、吹きつける砂に何度か咳込みもしたが…それなりに鋭いライの観察眼は、軸の取れてしまった車輪の端に所有印らしきものを捉えた。
ああ、見付けた…と妙な嬉しさに思わず顔を綻ばせるのも、束の間。
次の瞬間には、その表情は驚きと戸惑いの色を濃く浮かべたものへと豹変していた。…そうなるのも無理は無い。何故ならその所有印は…。
「―――バリアン、国家?」
逆さに燃える炎の焼印。
それは紛れも無く、自分達が遥か昔から敵対するバリアン国家の紋章だった。
……つまりこの砂喰いの群れに集られているのは、バリアン国家の荷車であるということだ。
敵方の物であると分かり一瞬身構えてしまったが、改めて辺りを見回してみれば、この荷車を操っていたであろうバリアン兵士の気配など何処にも感じない。
…恐らく、襲撃されてすぐに喰われてしまったに違いない。
よくよく目を凝らして見れば分かるであろう、元の砂漠の赤とは異なる別の赤色が、ライの足元に散っている。
いざとなったら…と、腰にぶら下がる護身様のダガ―を片手で握り締める。
一応、武術は心得ている。
自分が身を寄せる反国家組織の長達には並ばないし、今後も恐らく越える事など出来ないだろうが…砂喰いの一匹や二匹、仕留める事は出来る。
それに自慢では無いが、逃げ足は速い。自慢では無い。別に臆病という訳でもない。嘘ではない。
荷車に群がる砂喰いとの距離が、本の数メートルという所まで歩み寄ったが、どれだけその荷車に執着しているのか……どいつもこいつも、ライには見向きもしない。
空回りする車輪や木造の天井にわさわさと這いあがり、ガリガリと齧りつく彼らの隙間から、ライはその場で屈んで荷車を確認した。
たいてい、持ち主が誰なのかを示す何かしらのマークや刻印などが施されている筈である。
既に荷車は半壊してしまっていたが、それでも何か無いものかとライは根気よく目を走らせた。
途中、吹きつける砂に何度か咳込みもしたが…それなりに鋭いライの観察眼は、軸の取れてしまった車輪の端に所有印らしきものを捉えた。
ああ、見付けた…と妙な嬉しさに思わず顔を綻ばせるのも、束の間。
次の瞬間には、その表情は驚きと戸惑いの色を濃く浮かべたものへと豹変していた。…そうなるのも無理は無い。何故ならその所有印は…。
「―――バリアン、国家?」
逆さに燃える炎の焼印。
それは紛れも無く、自分達が遥か昔から敵対するバリアン国家の紋章だった。
……つまりこの砂喰いの群れに集られているのは、バリアン国家の荷車であるということだ。
敵方の物であると分かり一瞬身構えてしまったが、改めて辺りを見回してみれば、この荷車を操っていたであろうバリアン兵士の気配など何処にも感じない。
…恐らく、襲撃されてすぐに喰われてしまったに違いない。
よくよく目を凝らして見れば分かるであろう、元の砂漠の赤とは異なる別の赤色が、ライの足元に散っている。


