…金の亡者である彼の夢への熱意についてはさっぱりだが、先生は別の分野でも先生であった事は理解した。
専門用語を挟んだ彼の話は終わらない。再び口を開き始めた事に、ああこれは長話になるなと影で溜め息を漏らした。まさかこのまま夜明けまで続くとは思わないが、ひたすら相槌を打って適当に流し続ける他無い。
表面上だけでキャッチボールになっていない両者の会話の間で眠りについていたサナが、目下で不意に身じろいだ。
せっかく心地良い夢の中なのに、起こしてしまっては不味い。一先ず彼女を静かな場所にでも運んだ方良いだろう…と、ユアンの話に相槌を打ち続けながら隣に続く部屋に目を移す。
蟻の巣同様のこの地下は、ぐるりと見渡せば幾つもの横穴が覗いており、その空いたままの口は当たり前だが、明かりの無い暗闇が蓄えられている。今は自分達以外誰もいないのだから、続く横穴のどれからも漏れ出る光など有りはしない。
そう、それなのに。
黒一色の洞穴の口から。
瞬く一点の仄かな光が見えたのは、何故だろうか。
(―――…あれ、は…!?)
地底の世界に、人の手を加えられたもの以外で光など存在しない。
暗がりで発光する虫、植物がいると聞いたことはあるが、残念ながらこの砂漠の国には生息していない。
ここは、遥か遠くの地まで張り巡らされた地下通路の中だ。
仲間の誰かが経路として使うのは多々あるが……使用する道は限られている。それに、ライが見詰める先の通路は辿れども果ては行き止まりとなっている。…つまり、仲間内でそこから誰かが来ることなど有り得ないのだ。
………では、暗闇から漂ってくるあの小さな光は何だ?
侵入者でも潜んでいたのかと、次いでその存在に気付いたユアンは咄嗟に荷物を掴んで身構える。
…だが、第一発見者である当のライは、近寄ってくる怪しげな明かりを凝視したまま、何故だか微動だにしない。
「………ライ君…?」


