「―――そんな人に育てられたせいでしょうか。…だから僕は、まぁその……拾い癖がついてしまって………助けを求めている人を見ると、いても経ってもいられなくなるんです。でもまさか、人一人を拾う日が来るとは思ってもいませんでしたけど」
目下ですやすやと寝息を立てるサナを、ライは苦笑混じりに一瞥して言った。
この御時世だ。
記憶喪失の娘を拾うなど後々面倒な事しか無いだろうし、バリアンの奴隷運搬用の馬車にいたという事実だけでも、出来れば関わりたく無いと普通は思う。
サナからしてもそうだ…下衆な男達や人身売買を生業とする商人にでも拾われていたら、今頃どうなっていたやら。
つくづく、サナを見つけたのがライで良かったと思う。
サナに関しては何から何まで…ライは母親の様に、母親以上に世話を焼く。
まるでサナには自分しかいないのだからとでも言うかのように。それはもう甲斐甲斐しく…。
(………いや、と言うかむしろ…)
目の前の若い男女を、何やら薄笑いを浮かべて観察しながら独り思慮に耽っていたユアン。
その少女を見下ろしていたライの視線が、ふとこちらに移った。薄明かりの中で交わった青年の眼光を見詰めながら、その心根どおりの実に澄み切った瞳をしているなとユアンは笑った。
「そう言えば、先生の幼少時代はどんなものだったんですか?確か先生は、デイファレトの出身でしたよね」
興味津々といった様子で、ライは好奇心を滲ませた瞳を向けた。
ユアンとはそれなりに長い付き合いだが、この若い医者に関して個人的な事をほとんど知らないのだ。彼が何故医者で、何故生まれ故郷である雪国ではなくこの砂漠なんぞにいるのか。
アルビノとかいう生まれ持った体質故に、強い日光や酷暑が苦手にも関わらず、だ。身体に良くない環境下だと分かっていながらも、彼はデイファレトとこの国を行き来している。
よくよく考えれば、ユアンという人物はなかなか謎多き人かもしれない。


