亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~



何も無いなんて、あんまりだ。
確かに生きていく事は、何も楽しい事ばかりじゃない。都合良くなどいかない。人を妬み、羨み、恨み、蔑み……悲しみの連鎖が続く。そればかりかもしれない。

でもだからこそ………そんな泥水の中で見出した光が、とても美しくて、温かくて…感動する事の喜びを知って………生きる希望を抱く事が出来るのだ。

大切にする事が、出来るのだ。冷たくはない涙を、流せるのだ。





まだ始まったばかりのこの子に、終わりの手を差し伸べるのは早過ぎる。

こんなあたしでも知っている囁かで綺麗な世界を…いや、あたしが知っている以上の景色を、この子には見せてあげたい。


他人に突きつけられた絶望など受け取らないで。
生きて、生きて、生き抜いて。




そして。


















…気が付けば、赤子を胸に抱いて。
泣き叫ぶ赤子と一緒に、泣き叫んでいた。








要らないものなんて、何一つ無い。

捨てられていい命なんて、あってはならない。




もし捨てられていても、あたしが必ず拾う。















『可哀想だから、じゃないの。たくさん拾うと持つものが増えてしまうけど………良いこともたくさん増えるの』

『…僕を拾って、何か良いことあったの?』


子育てで生活が苦しくなっただけじゃないか、と首を傾げる自分に、母は再び笑顔を向けてきた。







いつものあっけらかんとした母の笑顔が、そこにはあった。














『あったさ!とっても良いことが!……将来有望な家族思いの、ライっていう可愛い馬鹿息子の母親になれたっていうとびきり良いことがね』