それでも変わらぬ笑顔を向け、ひび割れと傷だらけの手で撫でてくれる母に、心が痛んだ。
奇妙なやるせなさと劣等感でまみれた不満は、すぐさま行き場の無い苛立ちへと変わり、それは反抗期の様な形となっていった。
あれほど従順で母のためにと尽くしていたのが嘘の様に、幼い自分は母を避け始めた。自分達親子を知る村人は、ライにも反抗期が来たらしいと笑っていた。…そんな単純なものであれば、どれほど良かっただろうか。
「それでも態度を変えない母に、僕は苛々する一方で………二人きりになったある時…僕は訊いてみたんです。………『どうして僕を拾ったの?』って…。そしたら母は…何て言ったと思います?………本当、素っ頓狂な答えばかりくれる人でした」
『―――キラキラしていたからだよ。だから、お前を連れて帰ったの』
『………赤ん坊の僕って、発光してたの?』
『そんな赤ん坊がいたら誰だって好奇心で拾っちまうわよ。…馬鹿だねぇ…そうじゃなくて…。……でも、本当………あたしには、お前が輝いて見えたよ』
訝しげな表情で見詰めてくるライを見ようともせず、ただ黙々とランプの仄明かりの傍で細かな針仕事を続ける母。以前よりもいつの間にかしわの多くなった顔は、心なしか微笑んでいる様に見えた。
何がおかしいのだ、と不貞腐れて仏頂面を表に出すライに、母の笑みを含んだ声が向けられた。
『母さんはね、お母さんになることが出来ないのよ』
『………何それ?』
言葉の意味があまり理解出来ず、首を傾げる自分に母は…いつもの微笑みを絶やさぬままに言い切った。
『―――子供がね、産めないの。一度だけ、お腹に赤ちゃんが出来たんだけど、昔の恋人が産むのを許してくれなくてね。仕方無くお腹の赤ちゃんを降ろしたら、子供が出来ない身体になっちゃったの。………………もう、お母さんになれないの。………天罰なのかしらね』


