「子供達の父親…らしい人は見受けられなかったんです?」
ライを前にして非常に失礼な意見なのだが…可能性として考えられるのは、彼の母親が娼婦の様に身体で金を稼いでいたのでは、という事だ。
街と違って医療の手がほとんど伸びない郊外の村では、適切な避妊の手段が無いに等しかった筈だ。複数の男性と関係を持てば、必然的に妊娠後出産を繰り返す故に子供も増えていくだろう。
もしそうだとしたら、ライにとって非常に複雑な心境を抱かざる得ない事でしか無いのだが………次に見せたライの表情から、その不安が杞憂だったと分かった。
「いえ、それが全く。母の答えは、僕の想像を越えていましたよ」
そう言って当のライ本人は肩を竦めて見せると、苦笑混じりに再度口を開いた。
「―――『砂漠で拾ってきた』…ですって」
満面の笑みでこの人は何を言っているのだろう、と少年は我が母を唖然と見上げるしかなかった。さらりととんでもない発言をした母は、とても嘘を吐いている様には見えない程、とにかく潔い告白だった。
「…聞けば、いつの間にか家にいた子供達は皆砂漠で捨てられた孤児で、見付ける度に放っておけなくて連れて帰ってきたのだそうです。…産んでも生活苦で捨てる……そういう無責任な親が後を絶ちませんから…」
砂漠の煮えたぎる酷暑の下、広がる巨大な砂の海には様々な物が埋没している。荷物や馬車のがらくたや、遺跡跡の様な何か。弱肉強食を思わせる獣の無残な白骨を目にするのは日常茶飯事だ。
中には人間のそれも混ざっており、多くが賊に襲われたり砂漠から出られなくなった者達の成れの果てだ。
あまりにも目にしすぎて動揺する事も無くなってしまったのだが、それでもやはり真新しい死体…中でも、息絶えた赤子の姿は未だに辛いものがある。
故意に捨てられた赤子の死体を見つける度に、その親の心境を想像してみるのだが……ライには、分からない。
そんな哀れな小さな命を、ライの知らぬ間に砂漠で見つけては拾ってきていたらしい。


