そう言って穴の縁から飛び降り、レヴィは視界から姿を消した。たった今相棒のいなくなった空間をロキはじっと見詰め、ふと…目下の己の手に視線を移した。
(………)
無骨な武器を身体の一部の様に軽々と使いこなす自分の利き手には、今は何の刃も握られていない。
皮手袋に包まれた節くれ立ったそれを、ゆっくりと拳に変えたり開いたりと繰り返し、ロキは独り…誰にも聞こえない呟きを何とはなしにポツリと漏らした。
再度握りしめた利き腕の細かな古傷が、ピリリと小さな痛みを覚えた。
ここ数年は、古傷の存在さえも忘れかけていたのに。
「………………先に敵を討てば………戦争は、無くなる…。………始まる前に俺達が奴を殺れば……良いのか。………………そうか」
そうすれば、誰も悲しまない。
自分達が汚れ役になれば………戦にはならない。そのくらいの代償、どうってことはない。
どうってこと、ない。
「………ようやく手にした、平和な人生なんだ…バリアンの勝手で…壊されたくねぇよな…」
だから、良いんだ。
もう一度、理想の礎となるべく汚れてやろうじゃないか。
古傷が痛む。
まるで、お前は本当は殺しが嫌いなくせに…と、身体が嘲笑っているかの様だ。


