「―――殺し合いがそんなに嫌いか?」
…ピタリと、途端にその足が止まるのをレヴィは嘲笑を浮かべて眺めていた。ちらりと、ロキのしかめっ面が振り返ってくる。
奇妙な冷たさを携えて重なった双方の視線はそのままに、しばし無言だったロキがポツリと口を開く。
「………生憎、殺し合いを好む様な変態じゃねぇよ。それに………そういう訳じゃねぇ…」
「だったら、もっとマシな面をしたらどうだ?………黒槍ともあろう男が、平和主義を盾に弱気な態度を取ったり、ガキの様に愚痴をこぼすな」
「………うるせぇよ。お前の辛辣な説教は一々腹が立つんだよ…!…誰がガキだって……痛っ!?」
こめかみに青筋を浮かび上がらせたロキの肩を短剣の柄で強く叩き、レヴィは再び彼を追い越して数歩前を先導した。
小突きにしては重すぎる一撃を食らったロキは、ジンジンと痛む肩を押さえて抗議しようとしたが…彼の怒号が舌の先から出ようとした矢先、それは背を向けたレヴィの次の言葉によって遮られてしまった。
笑みを含んだ低い声。
この二人だけにしか聞こえないであろう、独り言にも捉えられる小さな呟き声を、ロキは聞いた。
「―――戦争は災いじゃない………これは、好機だ。………必ず、機会が巡ってくるぞ」
敵の意識が他に注がれた今…鳥無き空の下、この穴蔵で潜む意味は無い。ここで表に出ず、いつ出るというのか。
前線から飛び去った敵は、必ずやいつか止まり木で羽を休める筈だ。その機会が……そう遠くはない未来に訪れるだろう。
背後を取る、きっかけが。
「………まめに偵察するよう、お前の部下達にも言っておけよ………上手く行けば…敵の総大将の首を、直にはねる事も叶うかもしれないんだからな…」


