ランプの仄明かりに照らされた明るい朱色の瞳がこちらを見据え、少しだけ苛立ちを孕んだロキの声がレヴィの意識を引き戻す。
「………戦争なんて、起こるわけが無いだろ…縁起でもない。…それに戦争ってものは、互いに敵と認めない限り生まれるものじゃない。………バリアン以外の二国は、平和協定を進めようとしているんだ………第三次、なんて…馬鹿らしい…」
「…その平和協定とやらも、何処まで本気なのか怪しいところだがな。それに………敵と認める以外にも…敵と認めざる得ない時だってあるだろ。…どちらにせよ、戦火の気配はその内、火を見るよりも明らかになっていくさ」
「…冗談じゃない!」
…途端、ロキの低い声音は急に荒々しいそれとなって響き渡った。
離れにいる白黒の部下達は、唐突なロキの半ば怒鳴り声に近いそれに思わず顔を向ける。オルディオの骨ばった肩にマントを羽織らせようとしていたリディアも、何事かと二人がいる穴の方へと視線を移した。
…急にこいつは、何を言い出すのだ。
情緒不安定な自分自身に舌打ちをするロキを、レヴィは静かに見つめていた。
「…ロキ、何を苛ついている…戦争が起こるかもしれないとは言ったが………あくまで推測だぞ…。………………何だ?戦争という言葉がいけ好かないのか?」
「………………いや…悪い。…急に叫んで悪かった………何でもない」
そう言って頭を振り苦笑を見せてきたが、無理をしているのが丸分かりだ。結局のところロキが何に苛まれていたのか分からず仕舞いだが、レヴィはそれ以上問いただす事は無かった。
本人が言いたくないのなら仕方無い。
誰にでも、易々と口には出来ない事の一つや二つくらい胸に抱えているのだから。
…だが、その湿気た面は気に食わない。
何食わぬ顔で脇を通り越していくロキを横目で追いながら、彼が先程自分を呼び止めた様に、その背中にレヴィも短い呟きを吐いた。
立ち去る背中の憂鬱な影を、あざ笑うかの様に。


