亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~




「…ロキ、今夜はお開きだ。お前の部下達が、黒槍の解散宣言を待っているぞ」

暗がりの中、岩壁によりかかってレヴィが声を掛けるが…見下ろす先の男は何の反応も見せない。
最初はあんなに苛立って喚いていたというのに…途中、集会の最中から急に大人しくなったロキの様子に、レヴィは首を傾げる。

無言のまま、ロキの正面にゆっくりと腰を下ろし、口を真一文字に閉じたままの相棒を見詰めた。深く被ったフードの隙間から、僅かだが彼の表情が覗いていた。

そこに見えたのは、しかめっ面でも、仏頂面でもなく。
何の感情も無い、本当の無表情という…この男にしては珍しいそれを浮かべていた。



「…ロキ、聞いているのか?………とうとう耳まで馬鹿になったか。ただでさえ、まともな部分が少ないというのにな…」

「おい、どうして真顔なのか聞いても良いか?冗談と流す事前提だよな?なぁ?」

「聞こえているならいい」


振るった握り拳を軽くかわすレヴィを睨み上げながら、渋々といった様子でロキは重い腰を上げた。何やら思案中の表情はそのままで頭を掻くロキは、部下達の待つ方へと歩を進めたものの…二、三歩前進したところで立ち止まった。
前を歩いていたレヴィの背に、ロキの呟きが届く。



「………第二次、神声戦争…」

「………?何だって?」

聞き慣れない単語にレヴィは訝しげに振り返る。

「古代文明期…デカい戦争の中でも、史上最悪の……世界が殺し合った、最後の三国間の戦争の名称だ…」

「第二次、神声…?………知らないな。古代でも何でも、過ぎた事には興味が無いんでな。…それがどうした」

「………別に。ただ、三国間で戦争が起こるなら……史上三度目の世界戦争だと思ってな…」

「なら、例に倣って第三次神声戦争とでも命名してみるか?」


歴史になど興味無いとばかりに鼻で笑い返すレヴィ。だが、背後の男は何が気に食わなかったのか軽く眉をひそめた。