亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~



暗がりの中で点在するカンテラの仄明かりに照らされた彼等は、片腕に白、もしくは黒の布を巻き、それぞれ色違いに別れている。
全員無言を貫き、揃って目下のオルディオを前に大人しくしている様子は、一見よく統制された集団に思える。

よく観察すれば分かることだが…心なしか、白黒の集団同士睨み合っている、気がしなくもない。

張り詰めるピリピリとした空気を前に、少しの狼狽も見せることなく次に沈黙を破ったのは、しつこく鼻をすすり終わったリディアの声だった。
普段は聞き取るのも難しい小さな彼女の声も、この凹凸だらけの空間では反響して大きくなっていく。


「…話、戻す。…バリアン兵の警備、日に日に厳しく、なってる…特に昨日、一昨日辺りから……奴ら、あちこちに目、光らせてる」

「………その火に油を注いだ原因なら、心当たりがあるぜ。例えば………何処かの誰かさんの、資料庫漁りとか、な…」

白の布を巻いた集団の中から、そんな台詞がポツリと聞こえてくるや否や……その向かい側にある穴の縁に腰掛けていた人影が弾かれた様に立ち上がった。
強く握り締めた拳で岩壁を叩き、苛立った様子で声を上げる。



「…あぁ?………俺のせいだって言いたいのか?」

顔をしかめて舌打ちをしながら、ロキは明らかに自分の事を指している、先程の中傷だか揶揄だか曖昧な発言をした男を睨み付けた。
ロキの気分を害した当の男は、浮かべていた嘲笑から一変…不機嫌そうな表情に変わったかと思えば、負けじとロキを睨み上げた。


「…本当のことを言って何が悪い。事実、資料庫への侵入があったと露見しているんだ。…黒槍ともあろう男が、なんて様だ」

「………資料庫は、俺が侵入する前に…他の誰かに荒らされていたんだ!誤魔化しようが無いくらいに滅茶苦茶にな!…あの夜に俺が侵入していなくても、どうせあちらさんは侵入者を俺達だと思い込んでただろうよ!……結果は同じだった」


怒気を露わにしたロキの声が、この広い空間に響き渡る。