何故バリアン兵士が…と訝しむフォトの隣で着々と荷物をまとめる二人。声が聞かれぬよう、ライとユアンは兵士に隠れて囁き合う。
「…警備が厳しくなったとは聞いていましたけど…また辺鄙な所にまで目を光らせてきましたね…」
「資料庫荒らしの件が、それに輪をかけているのでしょうねー。まぁ、これくらいは当然でしょうよ」
そもそも自分は関係ないし、とでも言うかの様な余裕たっぷりの涼しげな笑みを見せるユアン。
この人はきっと、いざとなったら濡れ衣を着せて逃げるタイプなのだろうな…とライは内心で苦笑した。
「ところでライ君、君の所のお爺さんに薬を渡したいのだけど、今彼はいますか?」
お爺さん、というのは言わずもがな、オルディオのことだ。ライは頭を振る。
「…今はちょっと出ていて…あそこには僕とサナだけなんです。早くて今夜か…近い内に戻ると思いますから……どうせ今から僕等は帰りますし、よろしければお連れしますけれど」
街の外にはバジリスクのガーラを待機させている。一人くらい乗員が増えようが支障は無い。
「そうですか?それでは、お言葉に甘えましょうかねー。僕の患者の中で砂漠越えを強いる鬼畜な人は彼くらいですよ。………店を出たら裏門の辺りで落ち合いましょう」
ひとまずここは僕に任せてさっさと出なさい、と早口で言うや否や、その隻眼で呑気にウインクし、あろうことか…おもむろに腰を上げた。
バリアン兵士という厄介者が入ってきたせいで、店内は奇妙な緊張状態が続いている。自分の呼吸音が聞こえるほどに静まり返っていた空間で、椅子を引く音は必然的に響き渡った。
自然、兵士達の意識は立ち上がったユアンに向けられる。
とっさにテーブルの下に屈んでいたライは、フォトに裏口のある方向を指差して進むよう促した。ティーを脇に抱え直し、まだ眠そうに目をこするサナの手を引いて音を立てぬようにこそこそと移動した。
兵士達は理不尽な職務質問をしていたらしい。
別のテーブルの客に殴りかかろうとしていた兵士の意識は、空気を読まずに席を立ったユアンに早速注がれていた。
「…警備が厳しくなったとは聞いていましたけど…また辺鄙な所にまで目を光らせてきましたね…」
「資料庫荒らしの件が、それに輪をかけているのでしょうねー。まぁ、これくらいは当然でしょうよ」
そもそも自分は関係ないし、とでも言うかの様な余裕たっぷりの涼しげな笑みを見せるユアン。
この人はきっと、いざとなったら濡れ衣を着せて逃げるタイプなのだろうな…とライは内心で苦笑した。
「ところでライ君、君の所のお爺さんに薬を渡したいのだけど、今彼はいますか?」
お爺さん、というのは言わずもがな、オルディオのことだ。ライは頭を振る。
「…今はちょっと出ていて…あそこには僕とサナだけなんです。早くて今夜か…近い内に戻ると思いますから……どうせ今から僕等は帰りますし、よろしければお連れしますけれど」
街の外にはバジリスクのガーラを待機させている。一人くらい乗員が増えようが支障は無い。
「そうですか?それでは、お言葉に甘えましょうかねー。僕の患者の中で砂漠越えを強いる鬼畜な人は彼くらいですよ。………店を出たら裏門の辺りで落ち合いましょう」
ひとまずここは僕に任せてさっさと出なさい、と早口で言うや否や、その隻眼で呑気にウインクし、あろうことか…おもむろに腰を上げた。
バリアン兵士という厄介者が入ってきたせいで、店内は奇妙な緊張状態が続いている。自分の呼吸音が聞こえるほどに静まり返っていた空間で、椅子を引く音は必然的に響き渡った。
自然、兵士達の意識は立ち上がったユアンに向けられる。
とっさにテーブルの下に屈んでいたライは、フォトに裏口のある方向を指差して進むよう促した。ティーを脇に抱え直し、まだ眠そうに目をこするサナの手を引いて音を立てぬようにこそこそと移動した。
兵士達は理不尽な職務質問をしていたらしい。
別のテーブルの客に殴りかかろうとしていた兵士の意識は、空気を読まずに席を立ったユアンに早速注がれていた。


