二人の会話を真ん中から断ち切ったその一言…ユアンの物静かな声に、一瞬ぽかんと呆けたフォト。
対するライはというと、瞬時に状況を把握したのか、無言でティーを脇に抱え、寝ぼけているサナの手を取っていた。
ぼーっと寝ぼけ眼を擦るサナに「外に出るよ」と囁くライの小声が聞こえる。
向かいのユアンも、その大きなスーツケースと医療器具の入った荷物を引き寄せている。
…急に慣れた様子で席を立つ準備をする二人に訳が分からず、何がどうしたのと困惑気味にフォトは口を開こうとした。
…だが、少年の疑問は次の瞬間店内に響き渡った物音にかき消された。
―――バンッ…と、何の前触れも無く、戸口は乱暴に蹴り開けられた。
夜気を帯び始めていた乾いた空気を切り裂く唐突なそれに、店内にいた客の意識が一斉に向けられる。
口を開いた戸から身体を滑り込ませてきた数人の人影を見るや否や、その場にいた全員の表情があからさまではないにしろ、不機嫌な様子でしかめられたのは確かだった。
マントの砂埃も落とさず、挨拶も無く、無遠慮に店内に足を踏み入れてきた連中に、遠目から彼等を窺っていたライはその瞳に警戒心を宿した。
ライが構えるのも無理はない。
赤と黒を基調とした揃いの服に、微かな殺意と物騒な抜き身の剣をぶら下げた連中。
そんな集団を忌み嫌っているバリアンの民からすれば、その存在は嫌でも目に止まるのだから。
(―――バリアン兵士だ)
日も半身を地平線に沈めている日暮れ時。
こんな街の、こんな馴染みの客しか入らないような、国の兵士様という大層な身分の方々が踏み入れるにはあまりにも似つかわしくない一軒の飲み屋に、突如として現れたバリアン兵士の数は三人。
深くフードを被ったままの兵士達は無遠慮に店内を見渡すと、仲間内で何やらひそひそと呟いた後、我が物顔で店内をじろじろと見詰めながら歩き始めた。
巻き込まれたくないとばかりに自然と顔を逸らす客人達を尻目に、兵士達は椅子やテーブルを乱暴に蹴りつけていく。
対するライはというと、瞬時に状況を把握したのか、無言でティーを脇に抱え、寝ぼけているサナの手を取っていた。
ぼーっと寝ぼけ眼を擦るサナに「外に出るよ」と囁くライの小声が聞こえる。
向かいのユアンも、その大きなスーツケースと医療器具の入った荷物を引き寄せている。
…急に慣れた様子で席を立つ準備をする二人に訳が分からず、何がどうしたのと困惑気味にフォトは口を開こうとした。
…だが、少年の疑問は次の瞬間店内に響き渡った物音にかき消された。
―――バンッ…と、何の前触れも無く、戸口は乱暴に蹴り開けられた。
夜気を帯び始めていた乾いた空気を切り裂く唐突なそれに、店内にいた客の意識が一斉に向けられる。
口を開いた戸から身体を滑り込ませてきた数人の人影を見るや否や、その場にいた全員の表情があからさまではないにしろ、不機嫌な様子でしかめられたのは確かだった。
マントの砂埃も落とさず、挨拶も無く、無遠慮に店内に足を踏み入れてきた連中に、遠目から彼等を窺っていたライはその瞳に警戒心を宿した。
ライが構えるのも無理はない。
赤と黒を基調とした揃いの服に、微かな殺意と物騒な抜き身の剣をぶら下げた連中。
そんな集団を忌み嫌っているバリアンの民からすれば、その存在は嫌でも目に止まるのだから。
(―――バリアン兵士だ)
日も半身を地平線に沈めている日暮れ時。
こんな街の、こんな馴染みの客しか入らないような、国の兵士様という大層な身分の方々が踏み入れるにはあまりにも似つかわしくない一軒の飲み屋に、突如として現れたバリアン兵士の数は三人。
深くフードを被ったままの兵士達は無遠慮に店内を見渡すと、仲間内で何やらひそひそと呟いた後、我が物顔で店内をじろじろと見詰めながら歩き始めた。
巻き込まれたくないとばかりに自然と顔を逸らす客人達を尻目に、兵士達は椅子やテーブルを乱暴に蹴りつけていく。


