亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~



「いや…そういう仕事の話とかは、情報屋同士で話したりしないから…分からないけど。……最後に見掛けたのは、死体で発見された路地裏のすぐ近くだったかな。独りで歩いていてさ…。……あ…そう言えば」


ハッとした様に難しい顔を上げたフォトは、何か思い出したのか軽く手を叩いた。


「最初は独り、だったけど……その後直ぐに、誰かが来て二人で何か話してたよ。…って言っても、オイラは通りかかっただけで、しかも遠目だったし……一緒にいた人も後ろ姿しか見えなかったけど…」


偶然にもフォトが目撃した、情報屋と話していたその“誰か”だが…頭からフードを被りマントを羽織っていたし、中肉中背と目立った体系でもなかったという。
どんな人物だったのかと問われても、特徴という特徴が無さ過ぎて説明が出来ないのだ。


もう一度目にすれば、ああこの人だ…と分かるかもしれないが、唯一の記憶は遠目から見た後ろ姿のみだ。
確信という確信は得られない。



それに、もしかするとその“誰か”もまた、全く関係の無い一般人やもしれない。



「…そう、か。………情報、ありがとう。役に立ったよ」

結局のところ、何の答えも出せず仕舞いだが、こちらを窺う敵の存在は確かにあるのだと再認識出来た。
もう一度、ありがとうと笑って礼を言うライに、フォトはこめかみに手を当ててうんうん唸る。

「……んー…もしかしたら思い出せるかもしれないんだけどなー………あの後ろ姿、何となく覚えてるのに……口では説明出来ないよ…」


オイラが絵の才能でもあれば良かったのに、と悔しそうに頬を膨らませるフォト。
その膨れっ面が可愛くて、ライは思わず声を出して笑いそうになった。





その、途端だった。





















「―――静かに。二人とも、店を出る準備をして下さい」