亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~


フォト親子に、城の警備兵の数や交代時間などを調査依頼してきた謎の人物の存在だが、いくら考えても思い当たる節が無かった。

三槍の人間に扮して探っているスパイなのか、もしくは全く違う本当の意味での赤の他人なのか。

全くもって謎だが……確かなのは、フォト親子は関わらない方がいいという事だ。



「話を聞いている限り…ひょっとして、それが貴方達三槍の事を嗅ぎ回っている密偵だか不審者なんじゃないですか?」

向かいでぼんやりと二人の話を聞いていたユアンも、それはさすがに怪しいのではないか…と顔をしかめた。
三槍としては、その謎の人物の危険性を知るために調べるべきなのだが…ライとしては、今はとにかくフォト親子の安全を確保したい。

二人に面と向かって忠告されたのには、さすがに堪えたのか、渋々といった様子でフォトは小さく頷いた。

「………わ、分かったよ…おいら達、ただ兄ちゃん達の役に立ちたくて……。…………何の依頼も受けないようにするよ。………じゃ、じゃあせめて最後に今、何でも訊いてくれよ!知っている限りの情報は話すよ!最後だから、勿論タダでいいよ」



三槍の役に立ちたいという正義感と善意で始めた情報屋の仕事も、三槍であるライから断られてしまえばどうしようもない。
まだ少し未練があるようだが、気を取り直したフォトは持ち前の明るさを振る舞って言った。
彼の母親同様、健気に支持をしてくれるフォトにライは感謝する反面、申し訳なくも感じた。