亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~


その老長オルディオ率いる三槍も、慎重な動きを見せていたものの………近年、三槍の存在を揺るがす騒動が頻発していた。

他の組織と同様、衰退の危機感を覚えさせる決定打となったのが、つい三年前の小規模な内戦だった。


…『赤槍』の、喪失である。



国家側の巧みな罠によって見事に坩堝に嵌められてしまった赤槍は、たった一夜で滅ぼされてしまったのだ。
芋づる式に消されては不味いと判断したオルディオ達は、無惨に散っていった赤槍の無念に背を向け、国家の目の届かぬ更に闇の奥へと身を潜めた。

…それから三年経った今。
残された『白槍』と『黒槍』は、依然そのまま。戦力を維持したまま、暗闇から城を睨み続けている。








赤槍は、もう存在しない。

『三槍』ではない。

……だが、白と黒のそれぞれの長である二人は、自分達を三槍と呼んでいる。







(………無くなった赤槍を…彼等は背負っているのかな…)
















反国家組織、『三槍』の一人であるライは、まだ三槍が三槍であった頃を知っている。

今は亡き、赤槍の戦士達の姿も覚えている。


そんな彼等の上に立っていた、『赤槍』の長であったとある少女の面影も、未だに脳裏に焼き付いている。




そして戦火に向かって消えていく……赤槍達の咆哮も、耳に残っている。

















僕は、あの日をよく覚えている。

あの日は、特に暑い日だった。




暑かった。

本当に、よく覚えている。







僕は、彼等の死に様をこの目で見ていたから。






僕は、あの戦火を一生覚えているだろう。
いや、忘れてはいけないのだ。






何故なら僕は……………唯一生き残った赤槍の一人なのだから。