亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~


内容が内容なだけに声を潜めて互いに耳打ちしあう二人。群がる客の中でこそこそと内緒話をするライ達に、今までマイドリームに浸っていたオヤジがようやく気付いたらしい。
訝しげに潜められた強面の眼光を察知するや否や、フォトは慌ててライから離れた。

小さな身体を人混みに紛れさせていきながら、フォトは去り際に小さく囁いた。




「それなら、兄ちゃんの仲間から聞いて知ってるよ。…それと、お城の警備兵の人数と交代の時間もちゃんと調べてるよ!こっちはちょっと時間が掛かりそうだけどね」












「―――何だって?」

えへん、と胸を張ってそう言ったフォトの言葉に……ライは、一瞬ピタリと動きを止めた。…その反応が意外だったのか、口を開いたフォトは不思議そうに瞬きを繰り返しながらライを見据える。
ライは大きく目を見開いたまま呆然とした動かぬ表情で、思わず閉じてしまった唇を……うっすらと開いた。


…警備兵の人数?時間?
そんなこと…。





「………誰が、言ったんだ……?」

「誰…って……」

何故か噛み合わない会話が続く。お互いに何を言っているのか理解出来ず、馬鹿みたいに揃って凝視しあう沈黙の中を、周囲のざわめきだけが淡々と埋め尽くしていった。






フォト親子にはこれまでにも様々な情報収集を依頼してきた。その過去のどれもライは記憶しており、知らないものなど無い筈なのだが。
…そんな依頼は、ライの頭の片隅にも無く…そして勿論のこと、欠片程も、微塵も覚えが無いものだった。

加えてロキが単独で調べることになったという話も、あの夜に隠れ家にいた人間しか知らぬ事実である。レヴィやロキが話したとも考えられたが、その可能性は無いに等しい。フォト親子と面識があるのはライだけだからだ。









…では、一体誰が?


誰がそんな事を…?


「…フォト」

「…え?だって、兄ちゃん達の事よく知ってるみたいで…おいら達、兄ちゃんの仲間の人かと思っ…」