彼の周りにはたくさんの仲間がいる。しかし、友達という存在はレトにとって、他人の考えるそれとは違う。
もっと深い、もっと大事な………重みのあるものなのだ。
レトにはかつて、親友と呼べる存在がいた。生まれて初めての、たった一人の友がいた。
彼の親友はきっと、生涯その一人だけで………誰も、その親友の代わりになることは出来ない。
…彼の親友にはなれないけれど、心を許せる友として…この少し抜けている若い王様を支えていきたいとドールは思っている。
ドールは、知っている。
三年前のあの日。
彼が親友を失ったあの日から。
レトは。
「……昔からドールは変わらないけど……でも一つだけ、僕達変わったところがあるね」
懐かしそうにぼんやりと過去を振り返りながらそう言うレトに、ドールは訝しげな表情を浮かべた。
「………?…何か、あったかしら?」
環境の変化以外で変わった点など…きっと上げれば幾つもあるのだろうが、一際豹変した事など何かあっただろうか。
答えが分からず首を傾げるばかりのドールに、レトは何やら意味深な沈黙と微笑を浮かべたまま……片手を上げ、手の平を頭に乗せて見せながら、呟いた。
「………背。……僕、ドールより身長高くなったよね」
…刹那、何気ない動きで本の少し身体を後ろに逸らしたレトの鼻先を………空の植木鉢が掠めていった。
空は空でも重量のある陶器だ。無論、当たれば痛い。打ち所が悪ければそれだけでは済まない。
一秒足らずの間を置いて離れた所から陶器の割れた音が聞こえてきたのを耳にすると、レトは体勢を戻して植木鉢が飛んできた方向…その先で肩を戦慄かせるドールに苦笑を向けた。
「……危ないよドール」
「お黙り、黙れ、黙らっしゃい!……だから、何?何よ?何がそんなに嬉しいのかしらこの王様!………そっちが勝手にどんどん大きくなっていっただけでしょうが!」


