亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~



どうして、隊長の邪魔をするんだろう。


隊長も、皆も、あたしも、ただのんびりしたいだけなのに。



隊長に、笑ってほしいだけなのに。



「………」

半開きの大きな瞳を、チェス駒が立ち並ぶ地図へと向ける。
ゆっくりと細められたイブの眼光は、物言わぬバリアンという国の地形をじとりと睨みつけた。

皆の目が届かない円卓の下で、イブは垂れ下がった両手の爪で音を立てずに椅子をカリカリと引っ掻く。
カリカリ、カリカリと。それは次第に深く。鋭い爪が、椅子の木目にゆっくりと食い込んでいく。


隣の砂漠の国の事を考えれば、考えるほど………爪は、食い込んで…。


















(………………バリアンって、邪魔だなぁ)