その職業名のとおり、情報を売るのが彼の仕事だが、そこらの他人の会話で交わされる様な単なる情報ではない。
それらは金銭に変わる、価値ある情報だ。
世の中には、このオヤジの仕入れる情報無しでは商売がやっていけない人間がごまんと存在しているのだ。
その中でも特に密猟商人は、オヤジの店の常連客である。
秘かに耳を澄ませながらも、幾つかの空き箱をきちんと綺麗に積み上げるライの耳に…硬貨を掴む音とオヤジの声が連続して聞こえた。
「…今の時期の、デイファレトでの密猟はお勧めしねぇな。…あの国の統治はほとんど終わってはいるが、外に対する警戒がまだ薄い。以前同様、国境越えは簡単だが………あそこはもうすぐ、春になる。雪解けが始まれば、身を潜めるのが難しくなるだろうし……あの恐ろしい“狩人”達の行動範囲も広くなるからな。…あの国は昔から軍隊を持っていないが…今は違う。必要とあらば“狩人”を使うらしい。…まぁ、命が惜しくないって言うんだったら止めやしねぇぜ」
「フェンネルは止めときな。あの国に密猟商売を持ち込む事だけは遠慮願うぜ。やるなら冬になってからにしろ。お前らも知っての通り、フェンネルの国民のほとんどが国家に絶対忠誠を誓っている、馬鹿みたいな愛国心の塊だ。自分達が慕っている王族に迷惑がかかる事は絶対にしねぇし、密猟商人と分かれば耳も貸さない。最悪の場合、取っ捕まえられて更正させられて…強制送還されるのがオチさ。それに近年、あそこは動きが激しい……しばらくは近寄らないのが賢明だな」
隅に置かれた小さな樽に情報料の金を無造作に投げ入れれば、違う商人から矢継ぎ早に次の情報を求められる。
四方から重なって飛んでくる客人達の声を手慣れた様子で聞き分けながら、オヤジは淡々と口を動かしていた。
情報屋というのは、常に世の中の流れを読むのが仕事だ。
隣国の経済や戦況など、知れる限りの情報を貪欲に集める。
情報屋には、国境などという隔たりが無い。時には、異国の同業者と情報を交換したりするなどして仕入れているらしい。
何ともグローバルな世界だ。
それらは金銭に変わる、価値ある情報だ。
世の中には、このオヤジの仕入れる情報無しでは商売がやっていけない人間がごまんと存在しているのだ。
その中でも特に密猟商人は、オヤジの店の常連客である。
秘かに耳を澄ませながらも、幾つかの空き箱をきちんと綺麗に積み上げるライの耳に…硬貨を掴む音とオヤジの声が連続して聞こえた。
「…今の時期の、デイファレトでの密猟はお勧めしねぇな。…あの国の統治はほとんど終わってはいるが、外に対する警戒がまだ薄い。以前同様、国境越えは簡単だが………あそこはもうすぐ、春になる。雪解けが始まれば、身を潜めるのが難しくなるだろうし……あの恐ろしい“狩人”達の行動範囲も広くなるからな。…あの国は昔から軍隊を持っていないが…今は違う。必要とあらば“狩人”を使うらしい。…まぁ、命が惜しくないって言うんだったら止めやしねぇぜ」
「フェンネルは止めときな。あの国に密猟商売を持ち込む事だけは遠慮願うぜ。やるなら冬になってからにしろ。お前らも知っての通り、フェンネルの国民のほとんどが国家に絶対忠誠を誓っている、馬鹿みたいな愛国心の塊だ。自分達が慕っている王族に迷惑がかかる事は絶対にしねぇし、密猟商人と分かれば耳も貸さない。最悪の場合、取っ捕まえられて更正させられて…強制送還されるのがオチさ。それに近年、あそこは動きが激しい……しばらくは近寄らないのが賢明だな」
隅に置かれた小さな樽に情報料の金を無造作に投げ入れれば、違う商人から矢継ぎ早に次の情報を求められる。
四方から重なって飛んでくる客人達の声を手慣れた様子で聞き分けながら、オヤジは淡々と口を動かしていた。
情報屋というのは、常に世の中の流れを読むのが仕事だ。
隣国の経済や戦況など、知れる限りの情報を貪欲に集める。
情報屋には、国境などという隔たりが無い。時には、異国の同業者と情報を交換したりするなどして仕入れているらしい。
何ともグローバルな世界だ。


