おかげでここ数年、密輸入の商売は右肩上がりを続けている。
…だがそれも、バリアン中だけで見れば…の話ではあるが。

店の裏手に大人しく引っ込んだライを見遣りながら、オヤジは溜息混じりに旅人達を睨み付けた。

「……知る事と興味を持つ事は違う。ガキにそんな話を吹っ掛けるんじゃねえぞ、お前ら…」

「ハハッ、オヤジだけに父親面かい?…おうおう、分かったよ分かった。頼むからそんな恐い顔をするなよ。…子煩悩の性悪オヤジに可愛がられて、そこのライは幸せだねぇ?」

「……性悪は余計だ、糞野郎。…あんまり口が過ぎると、もうてめえには今後一切“情報”は売らねえぞ…」

勿論、連帯責任だ…と言いながら他の旅人達をグルリと見渡せば、全員が「冗談じゃない」と顔をしかめた。
黙りこくる彼らを一瞥し、人の悪い笑みを浮かべながらオヤジは目下の古い地図を見下ろす。

「…だったら、その無駄口を縛っておきな。……さっさと始めるぞ、買いたい奴から金を前に出しな。……分かっているとは思うが……“情報”料はその情報次第で変わるからな」

その低い声音でひっそりと囁くや否や、酒瓶やゴブレットを握っていた旅人達の手がすぐさま各々のマントの懐に引っ込み、全員が一斉に薄汚れた袋を取り出した。
積まれた木箱の上に勢いよく置かれたどの袋からも、金属同士が触れ合う鈍い音色が控えめに主張している。

袋の膨らみ具合とその音色の重さから、どれも相当な額の金銭が詰め込まれていることが分かる。
飲んだくれ達が醸し出す明るい空気は一変、突然ガラリと緊張感が張りつめてしまった店内の日陰の中を、ライはこっそりと作業の手を止めて覗き見ていた。

(………相変わらず、“情報”っていうのは高いんだな…)

袋の隙間からちらりと見えた金貨の眩い光に、ライは思わず目を瞑った。










通りのど真ん中を陣取り、何が入っているのか分からない木箱を店内に積み上げ、得体の知れない密猟商人達と商談を交わし……雑用としてライを雇ってくれているこの髭面の店主こと、オヤジは…いわゆる、“情報屋”という特異な職業を持った人間である。