無言を貫く奇妙な国家に対しぶつぶつと不満を呟く彼らを、店主のオヤジは鼻で笑った。
「…その規制も監視も無い…二重鎖国のおかげで儲けさせてもらっていやがるくせに、よく言うぜお前ら」
「ハハッ!違いねぇ!」
そう言って拳でテーブルを叩きながらゲラゲラと下品な笑い声を上げる旅人達。
道のど真ん中で急に上がった喜色ばんだ叫び声に、黙々と作業を続けていたライが一旦手を止め、不思議そうに店内を覗き見る。
「オヤジの言う通りだ。ここ最近は以前の様に兵士がうろついていないからな。…国境も手薄で………………“商品”の運搬がしやすいったらありゃしない」
低い声音で、そっと漏らす様に呟かれた旅人の意味深な言葉に、オヤジは顔をしかめた。
何か言おうと口を開こうとした寸前、店の裏手から唐突にライの声が乱入してきた。
「その商品って、密猟品でしょう?おじさん達は何の密猟品を取り扱っているんですか?」
「…ライ!!てめぇは引っ込んでろ!」
こめかみに青筋を浮き立たせたオヤジの怒声に、ライは「はいはい」と溜め息を吐きながら店の裏手に大人しく引っ込んだ。
その様子を眺めながら、旅人達はケラケラと笑い合う。
「いいじゃねぇかオヤジ。俺達商人の大半が密猟商人だって事くらい、このバリアンの国民なら赤ん坊だって知っている事だぜ?」
旅人達…正確には、彼らは商人であり、専門は主に密猟品の売買である。
隣国に棲息する珍しい獣を捕獲したり、時には奴隷用の女子供を拉致し、国内外の裕福な人間に売り飛ばすのだ。
危ない橋を渡ってでも珍品を欲しがる人間はたくさんいる。成功すれば一攫千金。例え生死に関わろうとも、極秘で運搬という吊橋を渡りきるだけで億万長者に早変わりするのだから、一度味を占めると止められない。
密猟は、そのスリルをも楽しむ。中毒にも似た仕事だ。
前バリアン王の老王が生きていた三年前までは、他国との接触を完全に絶つためにと国境沿いに軍が配備されていた。
そのせいで、他国への出入りが非常に困難だったのだが…。
国政が完全放置の今、国境を監視する国の目は何処にも無い。
「…その規制も監視も無い…二重鎖国のおかげで儲けさせてもらっていやがるくせに、よく言うぜお前ら」
「ハハッ!違いねぇ!」
そう言って拳でテーブルを叩きながらゲラゲラと下品な笑い声を上げる旅人達。
道のど真ん中で急に上がった喜色ばんだ叫び声に、黙々と作業を続けていたライが一旦手を止め、不思議そうに店内を覗き見る。
「オヤジの言う通りだ。ここ最近は以前の様に兵士がうろついていないからな。…国境も手薄で………………“商品”の運搬がしやすいったらありゃしない」
低い声音で、そっと漏らす様に呟かれた旅人の意味深な言葉に、オヤジは顔をしかめた。
何か言おうと口を開こうとした寸前、店の裏手から唐突にライの声が乱入してきた。
「その商品って、密猟品でしょう?おじさん達は何の密猟品を取り扱っているんですか?」
「…ライ!!てめぇは引っ込んでろ!」
こめかみに青筋を浮き立たせたオヤジの怒声に、ライは「はいはい」と溜め息を吐きながら店の裏手に大人しく引っ込んだ。
その様子を眺めながら、旅人達はケラケラと笑い合う。
「いいじゃねぇかオヤジ。俺達商人の大半が密猟商人だって事くらい、このバリアンの国民なら赤ん坊だって知っている事だぜ?」
旅人達…正確には、彼らは商人であり、専門は主に密猟品の売買である。
隣国に棲息する珍しい獣を捕獲したり、時には奴隷用の女子供を拉致し、国内外の裕福な人間に売り飛ばすのだ。
危ない橋を渡ってでも珍品を欲しがる人間はたくさんいる。成功すれば一攫千金。例え生死に関わろうとも、極秘で運搬という吊橋を渡りきるだけで億万長者に早変わりするのだから、一度味を占めると止められない。
密猟は、そのスリルをも楽しむ。中毒にも似た仕事だ。
前バリアン王の老王が生きていた三年前までは、他国との接触を完全に絶つためにと国境沿いに軍が配備されていた。
そのせいで、他国への出入りが非常に困難だったのだが…。
国政が完全放置の今、国境を監視する国の目は何処にも無い。


