月日の流れは、早い。
あっという間に過ぎ去った三年。

止まることを知らない濁流の如き混沌とした時の中で、世の中はあれやこれやと姿を変えていた。

目まぐるしい展開についていき、次の風を読むのは民にとって困難を極める事なのだが……どんなに疎い者でも、即座に理解出来た事がある。
…この砂漠の大地に新国王が生まれてからすぐに、民は自ずと解釈したのだ。




………厄介を裁いた刃は、どうやら待ち焦がれていた正義ではない…という事を。


…では、その刃は何なのか。
実のところ、その疑問に対する答えが無いのが現状である。…と言うよりも、“謎”であると述べた方が正確なのかもしれない。



「…以前の老いぼれ陛下の時の様な悪政は、無くなった。それは良い。それは良いが………問題なのは、それ以降の動きが何も無いって事さ。おかげで国はこの砂漠の様に荒れ果てたまま。………国があるのに国が無いって感じだな」

「王が変われば、何かしら変わるものだがな。…改革も無い、かと言って悪政も無い。……国政は完全に放置状態。鎖国は鎖国でも、国の中で鎖国をしている様なものか」


旅人らは苦笑いを浮かべながら、古びたゴブレットの底に張り付いた、最後の甘美な一滴に舌を伸ばして喉を潤す。
…事実、ここバリアンは新王が君臨してからというもの、国政という国政のほとんどが手付かずの状態で、国は良くも悪くもなくなっていた。
反国家思想への抵抗は依然続いてはいるものの、軍を出撃させるなどといった大きな動きは見られない。
改革を続ける他国とは対照的な、この寡黙な様。


今度の王はえらく消極的な様に思えるが…その沈黙が単なる怠惰と受け止めるのは、些か安易な考えだと…風向きを読むことに長けた国民は思う。


…逆に、何を考えているのか分からない事の方が問題だった。
腹の内が読めない相手というのは、ただただ不気味である。
他国ならまだしも、自国を警戒するのは国民としておかしい事の様に思えるが、そんな事はない。
バリアンの民はそうやって、生き延びてきたのだから。