学校から帰宅した常盤零は、郵便受けに手紙が詰められているのに気付いた。手に取り読んでみると、母からの手紙であった。
 その手紙には、一言こう綴られていた。
『早く帰ってきなさい』と。
 零は、その手紙を読むと、何もなかったように元の位置に戻した。
「いまさら帰れるかよ」
 そうつぶやくと、ズボンのポケットからカギを取り出し、開錠した。
 この家は、元々父の別荘であった。それが、些細なけんかで、勝手にカギを持ち出し、この家に住みついたのだ。
 零の父は、この街の有力者、常盤奏。不動産会社の社長を務めながら、建設者、などさまざまな仕事があり、どれが本当の仕事かは定かではない。
 有力者は、5人とそれぞれの妻子。