嫌な予感がした。

近づくと、その予感が当たっていたことがわかった。


狭い道路の真ん中。

ピクリとも動くことなく横たわる、その姿。


焦げ茶色をした毛並みの、まだ小さな猫だった。


誰に言われなくても、車に轢かれてしまったのだろうということは、見ればわかった。



「……可哀想だね」


そう思いながらも、もう死んでしまっているあの子猫に、してやれることは何もない。

わたしはなるべくその姿を視界に入れないようにしながら、避けるようにして通り過ぎた。

けれど。


「待て、夏海」


静かな声が後ろから聞こえて。


「え、なに?」

「止まってくれ」