「朗」 同じだよ、わたしも朗と一緒に来られて嬉しい。 今を、一緒にいられて嬉しい。 ただ、それだけを伝えようとした。 伝えたかった。 なのに─── 「……、…………」 「……え?」 ずるりと外れる朗の腕。 冷たい体が、力なくわたしの背中にもたれ掛かる。 「朗……どうしたの?」 自転車を止め振り返ると、朗の体がぐらりと傾き、それを急いで受け止めた。 支えのなくなった自転車が、大きな音を立てて地面に倒れる。 だけど、そんなことを気にしている余裕なんてどこにもなかった。