バスケットから取り出したのは、二人分くらは入るだろう水筒。


「温かい紅茶。それと、さっき作ったスティックタイプのチョコレートケーキ」


あとで食べようねと言う美和に、ああと答えて、車を発進させた。


学校から帰ってきてキッチンに閉じこもってると思ったら、そんなことをしていたのか。


「龍矢、どこ行くの?」


「大人しく乗ってろ」


そう答えたら、えーと頬を膨らませた美和。


ほんと、かわいい奴。


しばらく車を走らせる。


「眠かったら寝てていいぞ」


「眠くないよ。まだ10時だもん」


「あ?眠り姫のくせに、よく言うよ」


「眠り姫じゃないもん。ここから遠いなら寝ちゃうかもしれないけど」


最後の方は、自信がないのか声が小さくなってる。


その姿を見て、思わず笑いそうになった。