「きゃっ」


龍矢より先に歩いていたはずなのに、いつの間にか追いつかれ、挙句の果てに小さな子供のように抱っこされた。


「下ろしてよ。みんな見てるじゃん」


「見せつけとけばいい」


廊下にいる人の視線が、興味津々って感じで痛い。


「みんな見てるよ~」


恥ずかしすぎて、龍矢の首元に顔を埋める。


「キスでもしとけば、みんな美和に近づかないか」


ボソッと呟かれた言葉に、思わずバッと顔を上げる。


「絶対ヤダ!」


「顔真っ赤だけど?」


ニヤッと笑う龍矢を見て、私はまた龍矢の首元に顔を埋めた。


「美和、下ろすぞ」


その声と共に、足が地面に着く。


しばらく廊下を歩いてたどり着いた場所は、カメラや照明が置いてある広い撮影スタジオ。