意識を戻すと身体を縛られ、居間の床に横たわっていた。目の前には3人の男が椅子に座ってこちらを見ている。『鬼塚だな。まったく手間かけさせやがって。佐原優子は何処だ』目がすわり淡々と話す男は何をするかわからない様な残忍な雰囲気がある。『あなた達は何処の誰です?人の家に勝手にあがるなんて犯罪で…!』僕の言葉を無視する様に顔面を蹴りあげてきた。口から折れた歯と血が一緒に飛び出した。『小僧と遊ぶつもりはねぇんだよ。今から電話しな』戸惑っていると二発目の蹴りが背中に入り、息ができなくなった。何とか時間を稼がないと…兄さんが優子さんを保護するまでは…。僕は携帯を取りに部屋に行き、探しているフリをした。一緒についてきた残忍男がイライラしながら見ているのを背中に感じた時、着信がベッドの枕元から聞こえてきた。僕が慌てて電話をとろうとすると、男が携帯を取りあげてディスプレイを見てニヤリと笑った。『はい…あんた佐原優子だな。鬼塚はここにいるぜ。顔から血を流して泣きそうなツラしてな』電話の向こうで優子さんが何か叫んでいる声が聞こえた。僕は『優子さん!来ちゃ駄目だ!兄さんが…!』男の脚が僕の胃袋を蹴りあげて胃の内容物を吐き出した。『あんたの家で待ってるぜ。誰にも言わず一人で来いよ。違えたらコイツの無事は保証しない』残忍男は手下に指示を出し、ログハウスの内外に待機させた。僕は込みあげてくる吐き気に耐えきれずにもう一度吐いた。優子さんの性格なら必ず来てしまうだろう。その前に何とか渉兄さんに連絡を取らないと大変な事になってしまう。のこのこと牧場に戻ってきて簡単に捕まって、挙げ句には優子さんを呼び出すダシにされるなんて…。つくづく自分が情けくて涙が止まらなかった…。再び居間に連れて行かれ、男達は勝手に冷蔵庫から食料を出してむさぼりながら優子さんの写真をジロジロ眺めている。手下が『木村さん、このスケが来たらどうするんです』と、林檎をかじりながら質問した。木村と呼ばれた残忍男はナイフの刃先を指でなぞりながら『坂口の親父に書類作らせたら用済みだ』『なら、その後はやっちまっていいすか?結構好みなんすよ』いやらしい笑いをしてへつらう様に木村に目をやっている。木村は『ああ、勝手にしろ。どちらにしろ口は塞がなきゃならん』僕は思わず身体をおこして木村に体当たりした。