もう柏木の寝顔なんて見れないだろうから俺は目に焼き付けておくことにした。


・・・このかわいらしく愛しい寝顔を。


変人よばわりされても構わない。


ちゃんと目に焼き付けておこう。



柏木の髪を撫でる。


思った通り、さらさらな髪をしていた。



寝ている柏木に、お前をひとりぼっちにはしない。
俺が柏木の味方でいる。
という気持ちが伝わるように何度も何度も優しく髪を撫でる。



「柏木。」


名前をよんでみる・・・。



やっぱり返事はない。


俺は柏木の寝ている布団の隣に仲良く、くっついて敷かれている布団の中に入った。



俺が横を見ればすぐ近くに柏木の寝顔がある。


こんな近くで見る柏木の顔は、はじめてだ。







気付くと俺は柏木を抱きしめていた。

柏木から伝わる温もりを自分に刻み込むように。



神様が本当にいるのなら、頼みがある。



今日だけ。


今日だけでいいから、
柏木を抱きしめさせてほしい。


明日からは普通の、いつもの教師の遠藤隼人に戻るからさ。





満月が輝いていたきれいな夜だった・・・。