私はそう言ってしまった後に一瞬我に返って先生を見た。



凄く凄く…今まで見た事がないほど悲しい表情をしていた。



…そんな顔をさせたかったわけじゃないの。



「ごめん。俺が悪かったよな…」



先生は私に近寄る事なく教官室の扉に向かって歩いていく。



「ちょっと頭冷やしてくるな」



…違うよ、そんな事をさせたいんじゃないの。



ただ…



ただ…



「抱きしめて欲しいの」



先生の足音が止む。



「ただ抱きしめてほしかっただけなの…。頑張ったな、って…」



涙は止まる所か溢れるばかり…こんなはずじゃなかったのに、何やってるんだろう、わたし…。



「寂しいよ…。先生との文化祭楽しみにして、劇の練習だって頑張ったのに…いざ本番になって緊張する時に全然近寄って来てくれないというか避けてるように見えて…寂しかった…」



ここまでくると、ただの我が儘な子供…。



「今だって…全然私を見てくれなくて、それに二人の時なのに柏木って呼ばれたのがまた距離が離れてしまうみたいで…」



先生、絶対呆れてる。仕方ないよね…こんな私見せちゃったんだから…。



「…今日のドレスだって誰よりも先に先生に似合ってるって言われたかった…今着てるのだって先生にだけ見せたくて急いで来たのに…ッ!」



床にしゃがみこんでいた私の身体が急に先生のいる方へと引き込まれた。



気づけば私は、ずっとしてほしかった先生の暖かな腕の中…。



ただ、いつもと違うのは抱きしめる強さがいつもより強いという事…。