三十分後、外に一台の青いスポーツカーが止まった。水鳥のスープラだ。


「一体、こんな夜中に何の用よ、レディーを呼びつけておいて説明も無しなの」


 出迎えた狼士に悪態をつきながら、部屋に入る。

しょっちゅう遊びに来る見慣れた部屋の中には先客がいた。



「狼士。あんた、顔は悪そうだけど、人の道は踏み外さないって、お姉さん信じてたのに」


 狼士の肩に手をおいて悲しそうにうつむく。その手を払って狼士は反論した。


「誰がお姉さんだよ。バカ。あの女は伊呂里が拾ってきたんだよ」


「え、拉致!監禁?」


 いきなり自分の名前があがり、伊呂里が慌てて否定に割り込んだ。


「違う違う。本当に行き倒れだったんだから」


 力いっぱいに首を振る伊呂里。ほっといたらそのまま首がもげてしまいそうだ。


「わかったって、何にしても、‘野獣’の檻の中に一晩おいとくわけにもいかないでしょう。怪我とかはしてないわね」


 水鳥は二人をほって、ソファーに向かった。

 残された二人はお互いに指差しあって「野獣」と、呟いた。水鳥がソファーの女の子を見て驚きの声をあげた。


「あれ、この娘。うちのお客さんだよ」