咲姫が最後のパンを手にとったとき、ペンションの玄関が開いた。

扉からは二人組みの男が入ってきた。


男たちは、入ってくるなり大声で挨拶を叫び、水鳥の名前を呼んだ。


「おはよーございまぁす。水鳥、起きてるか」


ハーフパンツに派手なシャツの男と、それとは対照的に黒い上下の背の高い男は、食事中の二人を見つけてかけよってきた。


「お、君も元気になったんだね」


派手シャツの男が咲姫の脇に駆け寄る。


咲姫は今朝言われた「悪い男二人組みに拉致されていた」という言葉を思い出して、体を堅くした。


「あ、あれ?俺なにかしたっけ」


「ああ、伊呂里。あんた達のこと、この娘には拉致した悪い二人組みって伝えてあるから」


「おい、そらないだろ」


伊呂里と呼ばれた男は泣きそうな顔で取り繕うように咲姫に昨夜の状況を説明し始めた。


「あのね、別に俺達は…」


その言葉を遮るように、もう一人の男が話す。


「別にどう思われようが構わねえじゃねえか。助けてもらってお礼も言えないような女」


「狼士。それは私がちゃんと説明しなかったから…」


水鳥は咲姫を庇うように声をあげる。


「まあ、そんなことどうだっていいさ。元気になったならそれでいい。俺たちには関係ないことだ。じゃあな」


狼士と呼ばれた男は、「いくぞ」ともう一人の男の肩をつかんで食堂を出ようとした。


「狼士。ちょっと待ちなさいよ」