私は静かに携帯を閉じた。
もう終わりにするんだから。
もう………
離れるんだから。


私はおぼつかない足取りで歩き始めた。


当てもなく。
気付けば私は保健室の前まで来ていた。


「山下さん?どうしたのー?」

眉を下げて心配したように私を見つめる保健の先生。

「佐藤先生……助けて…」
「えぇ!?山下さん!?」


私は静かに目を閉じた。
真っ暗な闇の中。
私は走って走って……。
それでも光は見えなくて。

泣いて泣いて、

ただ貴方を捜してた。


「下さん!!山下さん!!」
「はっ………」


私は荒い息で目を覚ました。

制服は汗でぐっしょり。
どうやらうなされていたらしい。


「大丈夫??大分うなされていたけど………」
「……………」


私は涙がまだ止まらない目を腕で隠した。

「何があったかは話したくなるまで聞かないわ。今は着替え用意したから着替えて。ね?」

優しい口調にまた私の涙腺は緩んだ。

佐藤先生はもう中年の、私達から見たらおばちゃん。 でもお母さんみたいな優しさとか、温もりが堪らなく心地良い。

だから前はフラれた時良く相談にのってもらっていた。

「先生ごめんね?こんな事まで………」

私は着替えながら佐藤先生に謝る。

「何言ってんのー!!生徒が悩んでるのにほっとけないわよ。」
「そっか…………」


着替え終わりふと窓を見ると辺りはもう夕焼け色だった。