あれは良く晴れた春の日。

何気ないただの一日。


本当に普通のいつもと変わらない朝だった……。





「莉子ー!早くッ!!」

私の家の前で私を急かすのは 藤田湊(ふじた みなと)。


湊は 康介の弟。中学二年生で、私がまだ中学三年生だった頃。


幼なじみの湊は、小さい時からずっと一緒で、本当に仲が良かった。

小さい時の口約束。

『大きくなったら結婚しよう』


そんなのは、幼い時のほんの小さな約束に過ぎない。

私は湊が好きでは無かったし湊もそうだと思っていた。


いつもの用に遅刻ギリギリで。

なんだかんだ文句を言いながらも待っていてくれた湊の後ろに乗り。

いつもと全く変わらない朝を迎えていた。


……迎えていたはずだった。


私は湊の後ろでまだ眠い目を必死に開けていた。


「こんだけ寝といてまだ眠いとかどんだけなの……?」


呆れた用に問う湊は少しの坂を勢い良く下りて行く。


この坂だって。
広く蒼い空だって。
頬を撫でる暖かい風だって。


振り返って無邪気に笑う笑顔だって………。

いつもと同じだったのに。


もうその笑顔を見れないだなんて、誰が想像出来ただろう…………?